前回「要石(キーストーン)」について記載しましたが、アーチ構造の要石の事を「隅の頭石(すみのおやいし)」とも言います。
建築の最後にその石を入れることにより、建物がびくともしなくなるのは前回ご紹介した通り。その他に土台となる、大切な石を表す時にも用います。また日本では、庭師の世界でも使われ、庭の隅に置かれた一見目立たない石だけれども、それを取り除くと庭全体の景観が崩れてしまう石のことを言うのだそうです。これら3つのどの意味を考えても、その石が無くなると全体が機能しなくなる、大事な石だということが分かります。
それでは我々の教会の土台の石としての「隅の頭石」は、一体どうなっているのでしょうか?
この教会の敷地は、決して良い地盤とは言えません。それはここが遠い昔から、度重なる安倍川の氾濫により、堆積された地層だからです。堅い地層は、地表から7メートル程掘らないと出てきません。そのため杭基礎と言って、長い杭を教会建物の各柱の下に堅い地盤に当るまで計26本を打ち込み、それを鉄筋コンクリートの基礎とつないであります。鉄筋コンクリートは、その名の通り鉄筋とコンクリートとが一体になった構造です。強さの秘密は鉄筋とコンクリートの熱膨張率がほとんど同じであるために、夏の暑さや冬の寒さがくり返されてもひびが入りにくい事にあります。また、鉄の欠点である錆びやすさをコンクリートのアルカリ性が防いでいます。コンクリートは圧縮力に強く、引っ張られる力に弱い、鉄はその逆でお互いに助け合って強い構造を作り出しています。また、熱に弱い鉄をコンクリートが取り巻く構造の為に、熱が鉄まで届きにくくなっています。鉄筋は「主筋」と「帯筋」(あばら筋)で構成され「引張り力」や「圧縮力」以外の「曲げる力」や「剪断力(ずれの力)」を受けます。「主筋」は曲げる力に「帯筋」は剪断力に抵抗して土台の鉄筋コンクリートは剛構造(変型しない構造)で非常に堅固です。
ですから、我々の教会は、地下の固い地層とそれに繋がる26本の杭、鉄筋コンクリートが一体となって、ひとつの大きな「隅の頭石」としてスクラムを組んでいるのです。鉄筋の数を減らした強度偽装の心配が全く無いことは、毎日交代で工事現場に足を運んだ建築委員、そして主日毎に工事の進捗状況を見守っていた、信徒の皆さん一人一人が一番良くご存知だと思います。
(静岡聖ペテロ教会信徒 白石伸人)
2005年12月に静岡聖ペテロ教会の聖堂・会館、及び牧師館の建築が完了しました。新しい建物の裏話や古い教会には無かった機能などの話を教会報に連載したのがこのコーナーです。新しい教会をより身近なものとして使用して頂けるいいなぁという気持ちで当初数回の予定でスタートし、2年間に渡り、20回連載しました。原文に訂正加筆を加えながら、ここに連載していきます。
過去の「進め!建物探検隊」の記事