≪今月の福音書≫ 聖ヨハネによる福音書 13:31~
新しい掟
牧師 司祭 シモン 長野 睦
復活日が過ぎますと復活節の期節、六つの復活節の期節を過ごし、昇天日、聖霊降臨日と続きます。私たちの信仰生活も充実へと向かっていきます。
本日選びました福音書は復活節第5主日のものですが、この部分は主を裏切ったユダに一切れのパンを渡し、「しようとしていることを今すぐにするがよい」と命じられた後に続く部分です。ここから長い告別の説教に続きます。ここは十字架に向けての出発のときであり、愛している弟子たちとの別れのときでもあります。「いましばらくわたしはあなたがたと共にいる」この差し迫った別れのゆえに主イエス様の愛はいっそう切実に弟子たちに注がれざるを得ない様子を感じ取ることができます。そして同時に主イエス様の愛は弟子たちとの別れを必然化するものでもあります。前の部分で「わたしが去っていくことはあなた方の益になるのだ」と記されています。この逆説的な表現の意味は何なんでしょうか。私たちは愛ということを考えるとき、それは共にいることだと考えます愛は共にいることによって強く、深くなります。距離があれば愛は希薄になります。しかし、主イエス様はご自身が去っていくことこそ弟子たちの益になるのだという。この逆説の意味は、去っていくことによってこの弟子たちに聖霊が与えられる道に他なりません。依頼心を生み出す愛は本当の愛ではありません。自立に向かわせる愛こそ本当の愛になります。
主イエス様は自立を必要としている弟子たちに自ら去ることによって、その代わりに聖霊の導きによる自立を与えようとされているのではないでしょうか。
主イエス様は自ら去っていくにあたって何か残そうとはしておられない。ただ新しい掟のみを残されます。「互いに愛し合いなさい」「わたしがあなた方を愛したように互いに愛し合いなさい」という掟です。弟子たちと共に私たちもこの主イエス様の新しい掟に従って新しい毎日を過ごして生きたいと思います。
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