今回は、聖堂うしろにはまっている丸いステンドグラスの工法についてです。
薔薇窓といわれる大聖堂によくある丸窓に合わせて、デザインを考え作ったステンドグラスが入っています。まず、実物大の型紙から、ガラスをガラス用カッターでカットしていきますが、その後、ガラスとガラスを接着します。ガラス同士ではくっつかないので、間に金属を入れるのですが、その工法に2種類あります。
ひとつは銅テープ(カッパーテープ)による方法です。表面が銅で、裏に接着剤がついたセロテープのようなものを用います。これをガラス片の縁にぐるりと巻きつけます。同様にテープを巻いたガラス片を隣に置き、銅の部分をハンダで接着する方法です。細かなガラスを使用した曲面を持ったランプシェードなどに向いています。これはアメリカのティファニーという人が用いた手法で、簡単にガラス同士をつけられることから、広くステンドグラス教室などでも広まっています。
もうひとつは、ケームという断面がH型をした鉛の枠に両側からガラスを差し込む方法です。
ケームの交点を、やはりハンダで止め、ケームとガラスの間にはパテを入れてガラスを固定します。
カッパーテープを使用する方法よりも、大きなガラスを得意とし、窓に取り付けるステンドグラスによく使われます。こちらは古くから、ヨーロッパの聖堂に入れるステンドグラスなどに使われている手法です。この教会の正面入り口上部のステンドグラスは、ガラス窓の大きさや強度などを考えて、この工法により、作られています。
私たちの聖堂は、外側に窓が入っていて、その中にステンドグラスを入れていますが、古い建築物を見ると、このステンドグラスを外側につけることが多く、その場合に、パテ詰めによって、雨風をきちんとしのげる頑強なつくりになるわけです。
どちらの工法も、柔らかい鉛や銅をハンダでつなぎ合わせるので、あまり大きな物を作ると、ガラス本体の重みを金属で支えられなくなります。そのため、窓が大きい場合は、事前に鉄枠を作り、その枠の中に分割したステンドグラスを入れていきます。
幸い、この聖堂の丸窓の直径が90cmだったので、専門家に聞いてみたところ、鉄枠を入れずに済むサイズとのことでした。これより1回り上の規格、直径120cmの丸窓だったら、○に十字を入れた形のテス枠を入れていたかもしれません。
ただし、これから長く保つために、ステンドグラスの面に直角に横一本のリブといわれる真鍮でできた補強材を入れてあります。
カッパーテープとケームと、両方を用いて作られるステンドグラスもあります。他所の教会を訪問した時に、ステンドグラスがあったら、どのような工法でそれが作られているのか、観察してみるのも面白いと思います。
ちなみに当教会のステンドグラスは、信徒がデザイン&製作したので、原材料費のみで、完成することが出来ました。
(静岡聖ペテロ教会信徒 白石伸人)
(※この文章は、2007年10月に教会報に掲載されたものです。)
2007年11月に静岡聖ペテロ教会の聖堂・会館、及び牧師館の建築が完了しました。新しい建物の裏話や古い教会には無かった機能などの話を教会報に連載したのがこのコーナーです。新しい教会をより身近なものとして使用して頂けるいいなぁという気持ちで当初数回の予定でスタートし、2年間に渡り、20回連載しました。原文に訂正加筆を加えながら、ここに連載していきます。
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