静岡聖ペテロ教会(日本聖公会横浜教区)Shizuoka St.Peter's Anglican Church, Shizuoka

TEL054-246-8013 早朝聖餐式 午前7時30分~、午前10時半~ Regular Sunday Services 7:30a.m. / 10:30a.m Eucharist

大斎節第一主日の説教にかえて

すでにお知らせの通り、横浜教区では新型コロナウイルス感染症拡大防止のために3月1日と8日の主日聖餐式を中止しました。信徒各位には、聖堂で聖餐式を献げる司祭とともに、同時刻に当日の特祷、聖書日課とともに霊的陪餐をお勧めしました。館山聖アンデレ教会の吉川智之司祭が聖ヨハネ修士会による「霊的陪餐」の式文(文語)をデータとして作成くださりましたので、別に掲載します。
さて、2月26日から大斎節が始まりました。4月12日のご復活日に向かって、主日を除く40日間を、主イエス・キリストの御跡を辿りつつ過ごして参ります。大祭節の意義は「大斎始日の礼拝」の冒頭にその要点がまとめられています。
「兄弟よ、キリストを信じる人びとは、早くから、篤い信仰心をもって主の受難と復活の時を守ってきました。そして、教会はそのために、悔い改めと断食の期間を定めるようになりました。初めのうち、この大斎節は、その年の復活日に洗礼を受ける人や、また罪を赦されて教会の交わりに回復される予定の人びとによって守られてきました。しかし、その後教会は、すべてのキリスト信者がこれらの日々を注意深く守ることによって悔い改めへ招かれ、福音に宣言されている赦しを確信し、主キリストへの信仰と敬虔のわざに成長するものであることを悟り、これを奨励してきました。ゆえに、わたしは教会の名において、お勧めいたします。皆さんが、一人ひとりの内なる生活を顧みて悔い改め、祈りと断食に励み、自己本位な生き方から解かれて愛の業を行い、また神の聖なるみ言葉を熟読し、黙想することによって、この大斎節を忠実に守ることができますように」
わたしたちは大斎節を、古くから「克己修養の期節」と捉えてきました。今でも、大斎節と聞くと、まっさきに「大斎克己献金だ」と思い浮かべる方もおられることでしょう。若いときから大斎節中は克己に勤しんできましたし、今も大切にしています。そう言いながら、一方で「克己ってなんだろう…」という思いも徐々に覚えるようになってきました。「己に打ち克つ闘いの日々とは…」と。
大斎節第一主日の聖書日課、旧約には創世記2:4b以下、有名な堕罪の物語が読まれます。蛇にだまされて、食べてはならないと命じられていた園の中央に植えられた「善悪の知識の木」から実を採って食べてしまったというあの物語。そう、中学生の頃に習った“Adam’s apple”(のどぼとけ)の語源となったお話です。そして福音書にはマタイによる福音書4:1-11、荒れ野の誘惑の物語。この二つの物語に共通して登場するのが「悪魔」(創世記では蛇)です。この二つの物語を読んで、悪魔の目的が「人を神から引き離すこと」にあることが一目瞭然です。「これを食べたら神のようになれる、もう神はいらない」、「神ではなくわたしにひれ伏せばなんでも手に入る」。とても魅力的に聞こえますね。
今も悪魔はわたしたちを神から引き離そうと、あの手この手を使って忍び寄ってきます(今この時も!)。創世記が「主なる神が造られた野の生き物のうちで、最も賢いのは蛇であった」と書いているように、悪魔は狡猾です。はっきり申しますと、神さまの助けなしにわたしたちが太刀打ちできる相手ではありません。皆さん、悪魔の絵を描いて(思い描いて)みてください。多くの人が“バイキンマン”のような「わたくし悪魔でございます」という容姿で描くことでしょう。果たして悪魔がそんなわかりやすい姿で現れるでしょうか?時代劇に出てくる“盗人”と言えば“黒装束”に“頬被り”。夜陰にまぎれるにはもってこいかもしれませんが、誰がどうみても盗人です。そんなわかりやすい格好で悪魔は現れてくれません。あたかも天使のように、イエスさまのような姿でわたしたちの良心に訴えかけてくるのです。「見ると、その木はいかにもおいしそうで、目を引き付け、賢くなるように唆していた」のです。
己に打ち克つ。復活日の朝、四十日間の闘いを経て奇妙な満足感、達成感、充実感に浸っていたとすれば、そこで喜んでいるのはあなたと悪魔だけでしょう。神さまの助けがなければ、神さまのお示しになるところに歩んでいくことができない、そのことを突きつけられ、受け入れていくのが大斎節です。「我、何をか為さむ」と思い込んでいる「己」に打ち克つのが「克己」の意味ではないのかと…。「我、何をか為さむ」、それが「罪」に他ならないのです。
「主よ、我、罪人を憐みたまえ」
大斎節、呼吸とともにこの祈りを繰り返し繰り返し唱え続けて参りましょう。

2020年3月1日 大斎節第一主日
司祭 エドワード 宇津山 武志

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