静岡聖ペテロ教会(日本聖公会横浜教区)Shizuoka St.Peter's Anglican Church, Shizuoka

TEL054-246-8013 早朝聖餐式 午前7時30分~、午前10時半~ Regular Sunday Services 7:30a.m. / 10:30a.m Eucharist

月報聖ペテロ巻頭言

“密”の回復
司祭 エドワード 宇津山武志

5月8日、新型コロナウイルス感染症が「5類感染症」に移行しました。「コロナ禍」と呼ばれた未曾有の出来事を振り返ってみます。
2019年末に中国の武漢で原因不明の肺炎が流行しているというニュースを「大変だな、怖いな」と、関心を向けつつもどこか他人事として聞いていました。しかし、年が明けると感染は世界各地に拡大し、WHOが緊急事態を宣言、国内では「2類相当」に指定しました。「ダイヤモンド・プリンセス」を皮切りに、国内でも「クラスター」という聞きなれない言葉が飛び交うようになりました。まもなく市中に拡散し、罹患者、死亡者も爆発的に増加、医療機関も対応に苦慮し、学校も休校、飲食店はもちろん、商店も休業に追い込まれました。有名人の感染死や医療従事者の完全防護の姿を見て、最初の頃は「うつったら死んでしまう…」と、恐怖しました。
未知のウイルスへの知見が徐々に増し、必要十分な感染防止策も一般化、ウイルスそのものの変異もあり、幾度かの流行の波を繰り返しながら、ようやくこの5月に“季節性インフルエンザ”同等の5類に移行しました。実に3年を経てのことです。
これまでに、感染拡大防止のためにさまざまな対策がキャッチフレーズとともに講じられてきました。その一つが「三密の回避」です。三密とは、「密閉・密集・密接」、これらが感染拡大の要因となるというデータによるものです。教会活動はまさにこの三つを中心に成り立っていました。日曜日ごとに、聖堂という閉じた空間で、信徒は教会に集い、大きな声で神を賛美し、祈りを献げ、主の十字架によって罪を赦された神の民の平和の挨拶(欧米では握手やハグが一般的)を交わします。そして一つのパンと杯からキリストの聖なる命の糧に与ります。礼拝後の諸活動、牧会活動においても、神の家族であるわたしたちは膝と膝をつきあわせ、手を取り、近くで耳を傾け言葉を交わす。まさに八方塞がり、一時は礼拝の休止も余儀なくされました。
こうした中、新しい技術が随分と身近なものとなってわたしたちを助けてくれました。その代表格がオンラインによる会合や礼拝、そしてSNSによる情報の共有です。これらはどちらかというとわたしたちがちょっと二の足を踏んでいた領域でしたが、コロナ禍による孤独・孤立・閉塞という暗闇から、わたしたちを関わりと繋がり、陽の当たる場所へと連れ出してくれ、大いに励まされました。ところが一方で、家から出られなくても礼拝ができるツールは、やがてこたつでみかんを食べながらでも、家事をしながらでも礼拝ができるツールに変わってしまうことがあらわになってきました。オンラインによる会議は時間的にも経済的にも大きな効果を生み出しましたが、わたしには議論に深まりと広がりを欠くように感じられます。やが、密を防ぐこと、対面を“補完”するツールは、“主要”なルールへと置き換わってしまいました。会社員時代、仕事で大事なのは足を使うことだ、靴をすり減らせと教えられて染み付いていますが、そんなことを言うのはもう時代遅れなんでしょう。大事な会合・会議は対面でとことあるごとに言ってきましたが、すれ違い。あまりしつこくこだわると頑固者の変人だと思われるので最近では静かにしています。でも、わたしたちに必要なのはやっぱり“密”だと思うのです。福音は無言で握る人の手から、静かに寄り添う人の息遣いから伝わります。Wi-Fiでは伝わらないものを大切にしたいと思います。
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