静岡聖ペテロ教会(日本聖公会横浜教区)Shizuoka St.Peter's Anglican Church, Shizuoka

TEL054-246-8013 早朝聖餐式 午前7時30分~、午前10時半~ Regular Sunday Services 7:30a.m. / 10:30a.m Eucharist

月報聖ペテロ5月号巻頭言

わたしたちにとっての幕屋
司祭 エドワード 宇津山武志
「幕屋」 聖書では馴染み深い言葉ですが、日常会話でよく使うかというとそうでもありません。「天幕」の方がイメージしやすいかもしれません。もっと簡単に言ってしまうと「テント」です。
イスラエルの民はモーセに導かれ、隷属の地エジプトから紅海を渡り、約束の地へ向かって荒れ野を旅しました。この旅路は四十年にも及びましたが、留まる場所は一時的な「宿営」。彼らには移動しやすい「天幕」が最適でした。今も遊牧民族ベドウィンにその名残が見られます。聖地巡礼に行くと、アブラハム時代の遊牧生活を垣間見ることができる観光用のベドウィンキャンプがコースに加えられることが多く、わたくしも体験しました。荒れ野は日中は直射日光で暑く、夜は冷え込みます。40度を超える酷暑でも、日本より湿気が少なく、テントの中は殊の外快適でした。夜も冷気から守られるそうです。つまり、「幕屋」とは、
神の約束の地に向かって荒れ野を旅する彼らの「住まい」です。
「幕屋」は聖書にもう一つ大切な意味があります。旧約聖書では「臨在の幕屋」と表現されることが多く、すなわち、神の住まいです。これもやはり約束の地に向けた荒れ野の四十年の旅路に由来します。紅海を超え、エジプトを脱した彼らはシナイ山に辿り着きます。そこでモーセは神と見え、十戒を授かります。この十戒に従うことが、神がイスラエルの民に約束した祝福の条件でした。神はこの十戒を石の板に刻みモーセに託しました。十戒を刻んだ石板は神の指示に従って「契約の箱(聖櫃)」に収められ、カナンの地に向かって歩む彼らとともにありました。彼らにとって、契約の箱(その名なかに収められた石板)は、神が彼らとともに歩んでくださることのしるし、臨在の証でした。宿営地でこの契約の箱を納める場所として、「幕屋」が設けられました。わたしたちにとって「幕屋」は、神が人とともに荒れ野を約束の地に向かって歩んでくださることの象徴です。
新約聖書では、この世の旅路を生きるわたしたち自身を「幕屋」と表現しています(Ⅱコリ5章)。それは、わたしたちの人生が「荒れ野の旅」であるということをわたしたちに教えてくれます。なんだか苦難に満ちたイメージですね。でも、その旅路を歩むわたしたちの幕屋を、神は住まいとさえもしてくださります。イエス・キリストが肉と血をもってわたしたちに宿ってくださるのです。
わたしたちはこの幕屋をいつか脱ぎ去るときが訪れます。天のエルサレム(神の約束された乳と蜜の流れる地)で、その揺るがぬ神殿で、わたしたちは神の約束の成就に与るのです。喜びと感謝をもってこの幕屋の旅路をともに。
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