生きものである木は、50%以上の水分を含んでいるため、乾燥が不十分だと強度低下して反り、割れを生じるという欠点があります。
ペテロ教会の聖堂の左右六対の柱や大きな梁は、集成材を用いています。
集成材とは、乾燥した薄い板を同一繊維方向に接着剤で貼り合せた材料で、柱や梁によく使用されます。
集成材は、成形後に接着材の壁に阻まれるため、中心近くの水分は外に出ません。そのため、材料に用いる木材は自然乾燥後に乾燥装置によって細胞中の水分まで放出させて、水分率をわずか15%程度に落とした後に成形します。
完璧だと思われる木目が整然とした木でも、表に見えない節が何処かにあります。集成材は節が無いというよりは節(材料のつなぎ合せ部)がたくさん有るために力が集中せず分散され、結果的にムク材に比べ5割増しの強度があります。これは重量当りの強度は鉄の4倍、鉄筋コンクリートの5倍になり建物自体の軽量化が可能になり、価格がムク材の5分の1程度ということもあり、建築費のコストダウンにも結びつきます。
木材は簡単に燃えますが、その断面積が大きくなると、燃えた時に、表面の炭化によって出来た層によって、内部への酸素の供給が絶たれ、その後の炭化速度は1分間に1㍉以下で千℃程になっても必要な強度を保ちます。
これに比べて、鉄は700℃ほどで組織が変化し強度はほとんどなくなります。
木材は断熱性にも優れ、また10cm角の柱3mで一升瓶1本分の水分を出し入れするほどの調湿能力を発揮し、礼拝堂を快適な温度や湿度の空間にするのです。
また、音に対しては、人間が不快に思う高すぎる音や低すぎる音を吸収して、程よい音響を作り出します。見た目にも、日本人とって木は、安らぎ与えてくれます。
集成材は幅、厚み、長さ、形を制限されず接着可能で、長大材や湾曲材を自由に作ることが出来ます。
この礼拝堂の集成材で出来た柱は、舟の骨格を想像するような形状と木の温もりが私達を安らかに包み込んでくれます。
礼拝中、聖書に出てくるノアの方舟の中にいるような気持ちにふとなるのは、私だけでしょうか。
(静岡聖ペテロ教会信徒 白石伸人)
2005年12月に静岡聖ペテロ教会の聖堂・会館、及び牧師館の建築が完了しました。新しい建物の裏話や古い教会には無かった機能などの話を教会報に連載したのがこのコーナーです。新しい教会をより身近なものとして使用して頂けるいいなぁという気持ちで当初数回の予定でスタートし、2年間に渡り、20回連載しました。原文に訂正加筆を加えながら、ここに連載していきます。
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